Application Note 自動細胞イメージングと解析を用いたミトコンドリア完全性と
ミトコンドリア膜電位の評価

  • 化合物処理に対するミトコンドリアの完全性と膜電位の評価
  • ミトコンドリア毒性を評価するための複数の読み出し値を迅速に作成
  • あらかじめ定義された解析プロトコールで効率的にアッセイ結果を生成
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はじめに

細胞の健全性の重要な指標であるミトコンドリア機能は、ミトコンドリア膜電位(MMP)1,2の変化をモニターすることにより評価することができる。ミトコンドリアの偏光解消は、低酸素障害や酸化ストレスの初期シグナルである。カチオン性蛍光色素は、MMPを評価するための一般的なツールである。我々は、酸化的リン酸化の2つの既知の阻害剤であるアンチマイシンAとCCCPを用いて、短期間(60分間)の化合物処理を行った。

化合物処理の後、MitoTracker Orangeによる染色と核染色を行った。このアッセイにより、MMPに対する化合物の即時効果を調べることができる。

方法

U20S細胞(ATCC)を384ウェルマイクロプレート(Greiner社製、黒色透明底プレート)に1ウェルあたり6,500細胞でプレーティングし、翌日異なる濃度のアンチマイシンAとCCCP(Sigma社製)で60分間処理した。処理はトリプリケートで行い、化合物は100μM Antimycin Aと50μM CCCPから始めて1:3に希釈した。化合物処理30分後、PBS中のMitoTracker OrangeとHoechst 33342色素(Thermo Fisher, Carlsbad, CA)の混合液で、それぞれ最終濃度0.1μMと6μMになるように細胞を染色した。細胞を37℃、5% CO2で30分間染色した。細胞は生きたまま、あるいは4%パラホルムアルデヒドで固定した後にイメージングすることができる。細胞を4%パラホルムアルデヒド溶液で室温で30分間固定した。PBSバッファーで2回洗浄後、ImageXpress® Pico自動細胞イメージングシステムを用い、対物レンズ20Xで細胞をイメージングした。画像は、DAPIおよびTRITCチャンネルを用い、それぞれ20msおよび300msの露光時間で、1ウェルにつき1部位ずつ取得した。

図1. 自動イメージングによるミトコンドリアの完全性と膜電位の評価。コントロールのU2OS細胞とCCCPで60分間処理した細胞の20倍画像をImageXpress Picoシステムでイメージングし、CellReporterXpressソフトウェアを用いて解析した。左:MitoTracker Orange(オレンジ)とHoechst核色素(青)で染色したコントロール細胞と1μMのCCCPで処理した細胞のイメージング。右:核(緑)とミトコンドリア粒子(白)を示す画像解析マスク。酸化的リン酸化阻害剤CCCPで処理した結果、膜電位が低下した。

図2. CCCP(赤)とアンチマイシンA(緑)の濃度反応曲線は、ミトコンドリア解析から得られたさまざまな読み出し値について示した。T CellReporterXpressソフトウェアのミトコンドリア解析アルゴリズムは、ミトコンドリアの完全性と膜電位に対するこれら2つの化合物の効果を解析し定量化するために使用された。異なる読み出し値のEC50値を表1に示す。

ミトコンドリアの完全性と膜電位のマルチパラメトリック解析

図1は、コントロール細胞と酸化的リン酸化阻害剤CCCPで処理した細胞のイメージングである。無傷のミトコンドリア(オレンジ色の染色)の含有量に劇的な違いが観察される。CellReporterXpress™画像解析ソフトウェアのミトコンドリア解析プロトコルを用いて、ミトコンドリアの損傷を評価した。この解析では、核染色で定義された個々の細胞ごとに顆粒(ミトコンドリア)を見つけ(図1)、顆粒の総数、顆粒の総面積、細胞あたりの顆粒数、顆粒の平均強度や積分強度などの複数のパラメーターを特徴付けることができる。その結果、指示されたリードアウトの濃度反応曲線と測定されたEC50値を図2および表1に示す。

化合物 分析リードアウト EC50 ± 標準偏差
CloneMedia CHO Growth A with L-Gln 全顆粒 7.649 ± 3.286
セルあたりの平均顆粒数 4.692 ± 2.131  
顆粒総面積 3.359 ± 1.426  
平均顆粒積算強度 0.906 ± 0.227  
CCCP 総顆粒数 0.349 ± 0.035
セルあたりの平均顆粒数 0.334 ± 0.028  
顆粒総面積 0.233 ± 0.019  
平均顆粒集積強度 0.200 ± 0.017  

結論

ミトコンドリアの機能障害は、神経変性疾患や心血管疾患、医薬品の毒性作用や様々な環境化合物への曝露など、様々な疾患の発症に関与している。このアッセイは、ImageXpress PicoシステムとCellReporterXpressソフトウェアが、多くの細胞ベースアッセイやアプリケーションにおいて、ミトコンドリアの完全性とミトコンドリア膜電位の評価に効率的であることを示している。

参考文献

  1. Sakamuru, S., Attene-Ramos, M. S., & Xia, M. (2016).ミトコンドリア膜電位アッセイ。Methods in Molecular Biology (Clifton, N.J.), 1473, 17-22. http://doi.org/10.1007/978-1- 4939-6346-1_2.

     

  2. Attene-Ramos MS1, Huang R, Michael S, Witt KL, Richard A, Tice RR, Simeonov A, Austin CP, Xia M. (2015). ミトコンドリア膜電位を急性的に低下させる化合物を同定するための、ミトコンドリア機能に関するTox21化学物質コレクションのプロファイリング。Environ Health Perspect.123(1):49-56.

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