ご担当されている研究分野、研究内容についてお聞かせ頂けますでしょうか
私達は、「細胞内シグナル伝達系」と呼ばれる細胞の情報処理システムに興味を持って研究を進めています。細胞は、細胞外から増殖因子や炎症性の刺激などを細胞膜上の受容体で感知し、その情報を細胞内のシグナル伝達分子へと伝えます。その結果、細胞外の変化に適応するように表現型を出力することで、細胞や組織、個体としての恒常性を維持します。細胞内シグナル伝達系は、細胞内で起こる複雑な化学反応のネットワークだということが分かっています。
また、こういった細胞内シグナル伝達系を構成する分子の遺伝子に変異が入ることで、悪性腫瘍といった病態が引き起こされることも分かってまいりました。
私たちは、複雑な細胞内シグナル伝達ネットワークを定量的に明らかにするために、蛍光イメージングの手法をもちいてアプローチしています。
MetaMorphをご購入頂いた背景、ご研究での活用についてお聞かせください
MetaMorphを使うことでCCDカメラや光源といった様々なハードウェアを顕微鏡と一緒に制御する事ができるという事と、画像取得の自由度の高さ、解析手法が非常に豊富であるという使いやすさの点を考慮してMetaMorphを使っています。ご研究されている中での課題は何かありますでしょうか
やはり画像データの取得とその後の画像解析が大きな課題です。画像データの取得に関しては、私達は細胞が生きた状態で数日にわたってタイムラプス観察することが多いのですが、S/N比をできるだけ高くするように画像を取得したいと考えています。ですが、そうすると光毒性により細胞にダメージを与えてしまい、生理的な条件で観察できなくなってしまいます。従いまして、画像のS/N比と細胞の健康状態のトレードオフになることが多く、その適切な条件を見つけるために苦労しています。また、もう一つの画像解析に関してですが、タイムラプスイメージングを数日にわたって行いますと、1回に得られる画像は数十GBから数百GBにおよびます。このような規模の画像データになってきますと、一つ一つ手作業で解析することは不可能でして、画像解析を効率的に行うためにプログラムを用いた自動化が必要です。
ただ、画像取得の際に申しましたように、生命科学系の蛍光画像というのは、一般的な監視カメラとかの画像とことなり、極端にS/N比が低いことが多く、画像解析のプログラム自体も困難であることが多いです。
顕微鏡システムからハイコンテンツシステムであるIXMをImage Xpress Micro (IXM)に移行した背景、また導入メリットなどあればお聞かせください
通常の顕微鏡システムですと、4-8条件くらいまでは同時に取得できるのですが、やはりより多くの実験条件で、蛍光タイムラプス観察を行う上で、ハイコンテンツシステムであるIXMは大きなアドバンテージがあります。顕微鏡ではなく、IXMを使用されるのはどのような時でしょうか
IXMを用いることで、wellプレートで多くの実験条件を解析することが可能になります。IXMを用いると、96 wellプレートを用いて、蛍光タイムラプス観察を安定して行うことができますので、非常に助かっております。
MetaMorphでご自身で解析プロトコルを御作りされていますが、どのような解析プログラムなのかお聞かせ頂けますでしょうか
できるだけ自動化できるところはMetaMorphで自動で解析できるようにします。例えば、蛍光共鳴エネルギー移動FRETの原理に基づくバイオセンサーを用いた蛍光タイムラプス画像の画像解析ですと、蛍光のバックグラウンドをすべての画像で引き、ずれを補正して、FRETの効率を表すRatio画像を作製し、最終的にそのRatio値を数値データとして出力する、というところまでプログラム化します。ただ、ステップによってはところどころ微調整が必要になったり、うまくいっているかどうか目で確認する必要がありますので、そういったところは手作業にならざるを得ません。