酵素結合免疫吸着測定法(ELISA) サンプル内の抗原を定量的に検出するために使用する方法
ELISAとは?
ELISA(酵素結合免疫吸着測定法: Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)は、サンプル内の抗原を定量的に検出するために使用する方法です。抗原は、脊椎動物の免疫系の防御反応を引き起こすもので、インフルエンザウイルスや環境汚染物質などの毒素やその他の外来物質があります。抗原となりうる物質の範囲は非常に大きいため、ELISAは、多種多様なタイプのサンプルから抗原を検出し定量するために、多くの研究領域や検査で使用されています。ELISAを使用すれば、細胞溶解物、血液サンプル、食品などに含まれる特定の物質を解析できます。
ELISAには、直接法、間接法、競合法、サンドイッチ法という主な4つのタイプがあります。以下に、それぞれのタイプで分析物と抗体がどのように結合し使用されるかを示す図を示して説明します。
直接ELISA法
直接ELISA法では、抗原をマイクロプレートウェルの底に結合させておき、それに、抗原に特異的な抗体(検出可能な酵素やその他の分子とコンジュゲートさせたもの)を結合させます。
間接ELISA法
間接ELISA法では、抗原をマイクロプレートウェルの底に結合させておき、抗原に特異的な抗体を添加します。次に、酵素やその他の検出分子にコンジュゲートさせた二次抗体を、最初の抗体に結合させます。
競合ELISA法
競合ELISA法では、参照抗原をマイクロプレートウェルの底に結合させておきます。次に抗体を加えたサンプルをウェルに添加します。サンプル中に抗原が存在すれば、抗体との結合をめぐって参照抗原と競合します。結合していない物質は洗い流されます。サンプル中に多くの抗原があるほど、参照抗原によってウェルの底に結合する抗体の量が減少し、シグナルが弱くなります。
サンドイッチELISA法
サンドイッチELISA法では、標的抗原上の2種類のエピトープに特異的な2つの抗体を使用します。捕捉抗体をマイクロプレートウェルの底に結合させておき、抗原の1つのエピトープと結合させます。検出抗体は、抗原上の異なるエピトープと結合します。検出抗体は検出を可能にする酵素とコンジュゲートさせます。(検出抗体をコンジュゲートさせていない場合は、酵素をコンジュゲートさせた二次抗体が必要です)。
サンドイッチELISAアッセイ実施のためのステップ
ほとんどのサンドイッチELISAアッセイはマイクロプレートで行われ、プレートの底が抗体と他の試薬が結合する固相表面となります。マイクロプレートウォッシャーは、ウェル内の非特異的な物質を洗い流すために使用します。そして吸光ELISAプレートリーダーで、標的抗原が存在する場合に生じる色の変化を検出します。その後プレートリーダーソフトウェアを使用して標準曲線を作成し、結果を算出します。
以下の図に典型的なサンドイッチELISAアッセイのワークフローを示します:
ELISAプロトコルのワークフロー
通常のサンドイッチELISAプロトコルのワークフローには、複数の試薬添加、インキュベーション、洗浄ステップがあります。ここでは各ステップと、ELISAアッセイの実施に必要な機器と器具(マイクロプレートウォッシャー、吸光ELISAプレートリーダー、ソフトウェア)について紹介します。
-
捕捉抗体がウェルに結合
捕捉抗体がELISAプレートのウェルに結合します。
-
サンプルを添加
サンプルをウェルに添加することで、サンプル中の抗原が捕捉抗体に結合します。
-
マイクロプレートの洗浄
マイクロプレートの洗浄により、未結合物は洗浄され、目的の抗原のみが残ります。
-
捕捉抗体がウェルに結合
まず、捕捉抗体をマイクロプレートウェルの底に結合させます。
-
検出抗体を添加
検出抗体を添加することで、酵素結合検出抗体が目的の抗原の第2の部位に結合します。
-
マイクロプレートの洗浄
マイクロプレートの洗浄により、結合していない抗体を洗浄し、目的の抗原に特異的な抗体のみを残します。
-
基質が変換
基質添加により検出抗体上の酵素により基質が変換され、色が変化します。
-
測定
マイクロプレートリーダーがプレートを読み取ることで、発色した反応生成物を検出し、光学濃度(OD)値を出力します。
-
抗原量の算出
各サンプル中の抗原量が算出され、分析されます。
ELISAはセットアップが簡単な反面、アッセイ手順には時間と労力がかかります。ハイスループットなマイクロプレートベースアッセイワークフローのためのラボオートメーション・ワークフロー化は、離席時間の提供、スループットの向上、アッセイ手順の有効性と効率性、再現性の向上に役立ちます。
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を支援する製品・サービス
-
AquaMax
マイクロプレートウォッシャー生化学および細胞ベースアッセイ用マイクロプレートウォッシャー
-
SpectraMax ABS / ABS Plus
マイクロプレートリーダーフィルター不要で幅広いアッセイを迅速に行える吸光プレートリーダー
-
SoftMax Pro
ソフトウェア圧倒的な論文引用数を誇るマイクロプレートリーダー制御・データ解析ソフトウェア
-
マルチモード
マイクロプレートリーダーアップグレード可能な高機能性の吸光、蛍光、発光検出
-
発光モード
マイクロプレートリーダー発光検出シングルモードマイクロプレートリーダー(ルミノメーター)
ELISAアッセイおよびアプリケーション
酵素結合免疫吸着測定法は、多くの研究室やバイオテクノロジー施設でよく使用されている分析技術です。重要なELISAアッセイおよびアプリケーションに関連するアプリケーションノート、研究および技術は次の通りです。
-
化学蛍光VEGF ELISA
血管内皮増殖因子(VEGF)は、哺乳類の血管の発生および異常な血管増殖を伴う疾患プロセスに関連した分泌ポリペプチドファミリーの1つです。
SpectraMax Lマイクロプレートルミノメーターを用いた 化学発光VEGF ELISA法 > -
大麻中のアフラトキシンを
測定するここでは、AgraQuantトータルアフラトキシン4/40 ELISAキットを、SpectraMax® ABS Plus マイクロプレートリーダーおよび SpectraMax® iD5マルチモードマイクロプレートリーダーと共に使用して、もっとも一般的な大麻製品のひとつである花のアフラトキシンB1、B2、G1、G2の濃度をテストする方法を示します。
ELISA法を用いた大麻中の総アフラトキシンの測定 > -
ELISAキットを用いた
迅速な結果取得通常のELISAプロトコルは複数のインキュベーションと洗浄ステップが必要で、時間がかかります。CatchPoint SimpleStep ELISAキットでは、90分間でELISAワークフローが実施でき、従来のELISAに比べて、かかる時間が約3分の2短縮されます。
CatchPoint SimpleStep ELISAキットによるELISA結果の迅速化 > -
食品と飲料
品質保持や安全性の確保のため、食品・飲料メーカーは製品検査を実施しており、その検査の多くはELISAがベースとなっています。細菌性エンドトキシン、マイコトキシン、各種アレルゲン、成長促進ホルモン、抗生物質のチェックや食肉種の同定など、さまざまな分野で使用されています。また、吸光度検査は糖、フェノール、酸など食品中の物質レベルの定量にも使用可能です。
食品と飲料を見る > -
ビール中のグルテンの定量化
RIDASCREENグリアジン競合ELISAを用いて、市販の6種類のビール中のグリアジン濃度を検査し、グルテン濃度を決定しました。
ASBC公認ELISA法によるビール中のグルテンの定量化 > -
ELISAの歴史
ELISAがどのように発展し、現代における重要な科学的ブレークスルーに貢献してきたかをご紹介します。
ELISA誕生からCOVID-19研究までの歴史 > -
ELISAエンドポイント
プロトコルの作成法この動画では、SoftMax ProソフトウェアでELISAエンドポイントプロトコルを作成する方法を、順を追って示してています。プロトコルのテンプレート機能を用いて、迅速に自動データ解析が行えます。またカーブフィッティングにより結果を正確に可視化できます。
ELISAエンドポイントプロトコルの設定方法 > -
ELISAアッセイのセットアップと基本的な解析の実施方法
4パートからなるウェビナーシリーズのパート1では、SoftMax® Pro 7.1.1 GxP取得・解析ソフトウェアを紹介しています。いかに迅速、簡単にアッセイを行って結果が得られるかをご紹介します。
短いイントロダクションの後、SoftMax Pro GxPソフトウェアとSpectraMax® iD3マルチモードマイクロプレートリーダーを使用して、ELISAアッセイの例を用いてセットアップとデータ取得を行うライブデモンストレーションをご覧いただきます。デモンストレーションでは、データ取得に必要なソフトウェアの設定について説明してから、解析の基礎について紹介します。実際のデータセットを用いて、データ削減、テンプレート作成、標準曲線の作成について説明しています。
SoftMax Pro GxPソフトウェア・チュートリアル > -
ハイスループットなマイクロプレートベースアッセイのためのラボオートメーション
ELISA(Enzyme-linked Immunosorbent Assay:酵素結合免疫吸着測定法)は、検体の毒素や異物を検出できる一般的な定量法です。 ラボオートメーション・ワークフローは、ウォークアウェイ時間の提供、スループットの向上、アッセイ手順の有効性と効率性、再現性の向上に役立ちます。
ハイスループットなマイクロプレートベースアッセイのためのラボオートメーション > -
ELISAキットを用いた
メラミン測定Abraxisメラミン酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)は、メラミン定量スクリーニング用の免疫アッセイです。抗体によるメラミンの認識に基づいています。
マトリゲルにおける3次元細胞培養の自動化と解析 >
Romer Labs AgraQuant メラミンアッセイによるハイスループットなメラミン検出 > -
タンパク質の定量化
EMax Plusマイクロプレートリーダーと EMaxエンドポイントリーダーにより、サンドイッチELISA法を用いて、サイトカインであるインターロイキン-22(マウス/ラットIL-22)の濃度を定量した際の性能比較を行いました。
EMax Plusマイクロプレートリーダーによるタンパク質定量 > -
インターロイキン-8を
定量化する通常のプリセットされたプロトコルを用いて、SpectraMax® ABS Plusマイクロプレートリーダーを使用してヒトIL-8 SimpleStep ELISAを行う方法についてご紹介します。
SpectraMax ABS PlusマイクロプレートリーダーでSimpleStep ELISAキットを用いてインターロイキン-8濃度を定量する >