アプリケーションノート
CatchPoint SimpleStep ELISA キットを用いた ELISA 結果の迅速な取得
利点
- 1回の洗浄、90分間のプロトコルにより、結果が得られるまでの時間を従来のELISAと比較して約3分の2に短縮
- 蛍光読み取りによりアッセイシグナルを増強、ダイナミックレンジを拡大
- SoftMax Pro ソフトウェアの事前設定済みプロトコルにより、検量線と定量結果を迅速に作成
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はじめに
従来のサンドイッチELISAは、標的タンパク質に対する1対の抗体を使用します。1つはマイクロプレートのウェルにコートされた捕捉抗体、もう1つは、通常、Horseradish peroxidase HRP)やAlkaline phosphatase(AP)などの酵素とコンジュゲートさせた検出抗体です。これらの酵素をそれぞれの基質と反応させることで得られる吸光度や蛍光シグナルを、マイクロプレートリーダーで読み取ることができます。
通常のELISAプロトコルには時間がかかり、複数のインキュベーション・洗浄ステップが必要です。Abcam社のSimpleStep ELISA® 技術は、シングルステップで、アフィニティータグで事前にコートしたマイクロプレートのウェル内で抗体-ターゲットのサンドイッチ複合体を形成させて捕捉することにより、アッセイ時間を大幅に短縮します。プロトコルに必要なステップは、1回のインキュベーションと、シグナルを発生させる前の1回の洗浄のみで、所要時間はちょうど90分です(図1)。
CatchPoint® SimpleStep ELISA® は、CatchPoint色素であるStoplight Redを使用して、蛍光をベースとした検出を行います。
蛍光アッセイでは、定量上限が高く下限が低い、幅広いダイナミックレンジを提供できます。蛍光シグナルは安定性が高く、基質添加の10分後から1時間以上後まで、いつでも検出可能です。
図1 従来のELISAとSimpleStep ELISAプロトコルのワークフローの比較。
SimpleStep ELISA技術は、プロトコルにかかる時間をほぼ3分の2に短縮。
材料
- CatchPoint SimpleStep ELISA キット
- Human Pro-Collagen I alpha 1 ELISA キット、蛍光
(Abcam, ab229389) - Human Apolipoprotein A-IV ELISA キット、蛍光
(Abcam, ab229428) - Human TNF alpha ELISA キット、蛍光
(Abcam, ab229399) - Mouse Heme Oxygenase 1 ELISA キット、蛍光
(Abcam, ab229431) - Mouse MCP3 ELISA キット、蛍光(Abcam, ab229391)
- Mouse Pro-Collagen I alpha 1 ELISA キット、蛍光
(Abcam, ab229425)
- SimpleStep ELISA キット
- Human Pro-Collagen I alpha 1 ELISA キット
(Abcam, ab210966) - Human Apolipoprotein A-IV ELISA キット
(Abcam, ab214567) - Human TNF alpha ELISA キット(Abcam, ab181421)
- Mouse Heme Oxygenase 1 ELISA キット
(Abcam, ab204524) - Mouse MCP3 ELISA キット (Abcam, ab205571)
- Mouse Pro-Collagen I alpha 1 ELISA キット
(Abcam, ab210579)
- モレキュラーデバイスマイクロプレートリーダー
- SpectraMax® iD5 マルチモードマイクロプレートリーダー
(cat. #ID5-STD) - SpectraMax® i3x マルチモードマイクロプレートリーダー
(cat. #i3X) - SpectraMax® M4 およびM5 マルチモードマイクロプレー
トリーダー(cat. #M4 or M5) - FilterMax™ F5 マルチモードマイクロプレートリーダー
(cat. #F5)
方法
各キットに付属のアッセイプロトコルに従い、検量線を作成しました。比色定量シグナルの発生は10分後に停止しました。停止液を添加する必要はなく、Stoplight Red基質添加の10分後および1時間後に蛍光シグナルを測定しました。
同一のアッセイプレートの蛍光シグナルを、SpectraMax iD5リーダー(SpectraMax iD3リーダーはSpectraMax iD5リーダーと同等の蛍光検出能を有しているため、これらのアッセイにはSpectraMax iD3リーダーも適しています)、SpectraMax i3x、SpectraMax M4またはM5、およびFilterMax F5マルチモードマイクロプレートリーダーで測定しました。SpectraMax M4リーダーの吸光度および蛍光検出に関する性能規格は、SpectraMax M5リーダーと同じです。最適化された機器設定(表1)で、事前設定済みSoftMax® Proソフトウェアプロトコル(softmaxpro.org で入手可能)を用いて、データを作成・解析しました。
表1 CatchPoint SimpleStep ELISA検出用のSpectraMaxリーダーの設定。
SpectraMax iD5 およびSpectraMax M5リーダーは、ともにモノクロメーターベースの光学系を使用しているため、設定で光学配置を選択する必要はない。SpectraMax i3xリーダーは、モノクロメーターまたはフィルター内蔵の検出カートリッジを使用できる(CatchPoint SimpleStep ELISA検出にはモノクロメーターで十分である)。FilterMax F5リーダーでの検出はフィルターのみとなる。
結果
図2に示したデータは、SimpleStep ELISA 吸光キットと比較して、CatchPoint SimpleStep ELISA蛍光キットでは、高いシグナルウインドウと拡張されたダイナミックレンジが得られることを示しています。結果は、使用したアッセイキットによって異なりました。CatchPoint SimpleStep ELISAキットのシグナル対バックグラウンド比(S/B)は、少なくとも1時間は安定であることが示されました。蛍光キットでは、シグナル発生反応を停止させるステップが不要で、アッセイの時間対シグナルを最適化でき、フレキシブルな読み取りが可能です。
CatchPoint SimpleStep ELISAや他の蛍光アッセイの結果を異なる蛍光マイクロプレートリーダーで検出すると、多くの場合、得られるシグナルの強度が異なります。図3に示すように、シグナル/ バックグラウンドとして結果をプロットしたところ、試験したすべてのリーダーでほぼ同一のプロットが得られ、これらのリーダーがいずれも、CatchPoint SimpleStep ELISA 蛍光シグナルの検出に適していることが確認されました。
図2 SpectraMax M4リーダーでの、SimpleStep ELISA吸光キットとCatchPoint SimpleStep ELISA蛍光キットの読み取り値の検量線の比較。
比色定量シグナルの発生は10分後に停止し(灰色のプロット)、蛍光シグナルは、Stoplight Red基質添加の10分後(緑色のプロット)または1時間後(青色のプロット)に測定した。シグナル対バックグラウンド比(S/B)と濃度(pg/mL)をグラフにプロットした。垂直方向の点線は、現行の吸光度キットで推奨されている濃度範囲を示す。
CatchPoint SimpleStep ELISA 蛍光キットでは、ダイナミックレンジが上限下限共に広がっている。
図3 さまざまなプレートリーダーを用いたHuman Pro-Collagen I alpha 1 CatchPoint SimpleStep ELISA 蛍光キットのデータの比較。
同一のアッセイプレートを、SMPの事前設定済みプロトコルを用いて、SpectraMax iD5、SpectraMax i3x、SpectraMax M5、およびFilterMax F5リーダーで読み取った。4種類すべてのリーダーの、正規化したS/Bとターゲット濃度のグラフでは、ほぼ同一のプロットが得られた。
結論
CatchPoint SimpleStep ELISA キットは蛍光をベースとしており、吸光をベースとしたSimpleStep ELISA キットに比べて高いシグナルおよび広いダイナミックレンジを提供できます。
CatchPoint SimpleStep ELISA キットでは、ELISAワークフローが90分で実施可能で、結果を得られるまでの所要時間を従来のELISAと比較してほぼ3分の2に短縮できます。CatchPoint SimpleStep ELISAキットは、アッセイを検出しやすくし迅速に結果を与える事前設定済みのSoftMax Pro ソフトウェアプロトコルを用いて、SpectraMaxおよびFilterMaxリーダーで検証済みです。
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