アプリケーションノート
発光イムノアッセイで血清サンプル中のSARS-CoV-2 IgG を検出する
利点
- ホモジニアスな洗浄不要方式でHTSにスケールアップ可能
- 使用するサンプル量はわずか15μL
- 1時間未満で結果を取得
SpectraMax iD5マルチモードマイクロプレートリーダーについて問い合わせる
はじめに
SARS-CoV-2に対する免疫応答の一環として、感染者はウイルス特異的抗体を産生します。それらは症状発現後1〜3週間は血液中で検出可能です。免疫グロブリンG(IgG)とIgMがほぼ同時に出現し、IgGは長期間にわたり高値を維持します1,2。感染またはワクチン接種によって生じた検出可能な抗体が血清中に存在すると将来的な感染を防ぐことができますが、これらの抗体が持続する時間と可能な防御の程度は、SARS-CoV-2に関する多数の疑問の1つであり、現在も精力的な研究が行われています。
ヒト血清中のSARS-CoV-2抗体検出用のイムノアッセイは、この疾患の理解とワクチン研究を進めるための重要なツールです。PromegaのLumitTM Dx SARS-CoV-2 イムノアッセイは、SmBiTとLgBiTで標識したSARS-CoV-2スパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)のフラグメントを使用しています。SmBiTとLgBiTはNanoLuc®ルシフェラーゼの2つのサブユニットで、お互いが非常に接近するまで機能しません。これらの標識したウイルスタンパク質フラグメントを、SARS-CoV-2抗体を含むサンプルと共にインキュベートすると、これらのフラグメントが抗体に結合し、SmBiTとLgBiTのサブユニットが会合して機能性ルシフェラーゼとなります。Lumit検出試薬を加えると、発光シグナルが発生し、マイクロプレートルミノメーターで測定できます。
Lumitアッセイのシンプルな添加して測定するだけの方式を図1に示します。洗浄工程がなく、1時間未満で結果が得られるため、ハイスループットスクリーニングに適したアッセイです。超冷却光電子増倍管(PMT)を備えたSpectraMax® iD5 マルチモードマイクロプレートリーダーでは、Lumit Dx SARS-CoV-2イムノアッセイの発光検出を高感度で行えます。
図1. Lumit Dx SARS-CoV-2イムノアッセイの分析ワークフロー。添加してインキュベート後に測定するだけの方式のため、1時間未満で結果が得られ、自動化およびハイスループットスクリーニングにも使用できます。
材料
- Lumit Dx SARS-CoV-2 イムノアッセイ(Promega cat. #VB1080)
- COVID-19陽性血清サンプル (BioIVT cat. #HMSRM-COVID)
- 正常ヒト血清(Amsbio cat. #HSER-2mL)
- 96 ウェル白色マイクロプレート(Greiner cat. #655075)
- SpectraMax iD5 マルチモードマイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス)
方法
以下のとおりアッセイ試薬を調製しプレートをセットアップしました(詳細はLumit Dx SARS-CoV-2イムノアッセイ技術マニュアルを参照してください)。
- 5mLの10X Lumit-Dx イムノアッセイ希釈バッファーを45mLのLumitTM-Dx PBS/EGTAに加えて、1X Lumit-Dxイムノアッセイ希釈バッファーを調製しました。
- COVID-19患者由来または健常人ドナー由来の血清30μLと、70μLの1X Lumit-Dxイムノアッセイ希釈バッファーを混合して、血清サンプルを希釈しました。トリプリケートでサンプル測定が行えるよう十分な容量を調製しました。通常、サンプルは1つのウェルで測定し、必要量は1サンプルあたりわずか15μLです。
- 使用直前に以下をチューブ内で混ぜて、Lumit-Dx CoV-2 BiTsマスターミックスを調製しました:1X Lumit-Dx イムノアッセイ希釈バッファー5mL、Lumit-Dx CoV-2 LgBiT(赤キャップ)9.4μL、Lumit-Dx CoV-2 SmBiT(青キャップ)9.4μLチューブを静かに転倒混和しました。
- Lumit-Dx陽性コントロール、Lumit-Dx陰性コントロール、Lumit-Dxアッセイキャリブレータを使用直前に融解して室温に戻しました。チューブを軽く遠心し、内容物を底に集めました。
- 96ウェル白色プレートに以下を添加しました。
・40μLのLumit CoV-2 BiTsマスターミックス(全アッセイウェル)
・20μLの希釈済み患者血清サンプル(トリプリケート)
・20μLのLumit-Dx 陽性対照(トリプリケート)
・20μLのLumit-Dx 陰性対照(トリプリケート)
・20μLのLumit-Dx アッセイキャリブレータ(トリプリケート) - プレートにカバーをして、室温で20分間インキュベートしました。
- インキュベート終了後、使用直前に7mLの1X Lumit-Dxイムノアッセイバッファーと230μLのLumit-Dx検出基質(灰色キャップ)を混和し、Lumit-Dx検出試薬を調製しました。チューブを静かに転倒混和しました。
- 60μLの検出試薬をウェルに添加し、プレートを室温で3分間インキュベートしました。
- 表1に示した設定で、SpectraMax iD5 リーダを用いてプレートを測定しました。マイクロプレートを測定後、SoftMax®Proソフトウェアのプレートセクションに相対発光量(RLU)が表示されました。プレートの各ウェルをテンプレートを用いてグループに割り当て、得られた表を用いて結果を計算し表示しました。
クオリティーコントロールはキットの技術マニュアルに記載のとおり評価しました。適切なアッセイパフォーマンスが確保されていることを確認するために、Lumit-DxアッセイキャリブレータならびにLumit-Dx陽性コントロールとLumit-Dx陰性コントロールを用いました。アッセイキャリブレータのRLUに比べ、陽性コントロールのRLUは高値で、陰性コントロールのRLUは低値である必要があります。これらの条件が満たされない場合、プレートの結果は無効です。
結果
各試験サンプル(S)の相対発光量(RLU)とアッセイキャリブレータ(C)の平均RLUとの比からアッセイ結果を算出しました。S/C ≧ 1のサンプルはSARS-CoV-2抗体陽性、S/C<1 のサンプルはSARS-CoV-2抗体陰性です。アッセイキャリブレータの平均RLUは548、COVID-19患者6例のサンプルの平均 RLU は 1787〜14,155、健常人ドナーのRLUは86でした。
表2に示すように、COVID-19患者のサンプルのS/C値はすべて1を超え、陽性結果であることが示され、健常人ドナーのサンプルは1未満で、陰性結果であることが示されました。
注:アッセイプレートをSpectraMax i3x、SpectraMax M5、およびSpectraMax Lリーダーでも測定し、同様な結果を得ました。
パラメータ | 使用した設定 |
Read mode | LUM |
Read type | Endpoint |
Wavelengths | All wavelengths |
Plate type | 96-well standard opaque |
PMT and optics | Integration time: 1000 ms Read height: 4.7 mm |
More settings | Show pre-read optimization |
表1. Lumit-Dx アッセイに用いた SpectraMax iD5 リーダーの設定。リーダが検出する発光を最大化するため、All Wavelengths 設定(波長選択なし)を選択しました。測定前に、SoftMax Pro ソフトウェアの読み取り高さ調節オプションを用いて読み取り高さを最適化しました。
サンプル | 平均比(S/C) | % CV | 結果 |
COVID-19 患者 1 | 3.26 | 1.3 | 陽性 |
COVID-19 患者 2 | 7.30 | 2.2 | 陽性 |
COVID-19 患者 3 | 19.80 | 0.2 | 陽性 |
COVID-19 患者 4 | 14.98 | 4.3 | 陽性 |
COVID-19 患者 5 | 25.83 | 6.3 | 陽性 |
COVID-19 患者 6 | 14.77 | 4.7 | 陽性 |
健常人ドナー | 0.15 | 9.5 | 陰性 |
陽性コントロール | 7.74 | 3.2 | 陽性 |
陰性コントロール | 0.25 | 5.6 | 陰性 |
表2. SpectraMax iD5 リーダーを用いた患者サンプルの Lumit Dx SARS- CoV-2 アッセイの結果。すべてのサンプルとアッセイコントロールはトリプリケートで測定し、%CVを示しました。結果は SoftMax Pro Softwareを用いて計算し、解釈しました。
結論
表2 SpectraMax iD5 リーダーを用いた患者サンプルの Lumit Dx SARS- CoV-2アッセイの結果。すべてのサンプルとアッセイコントロールはトリプリケートで測定し、%CVを示しました。結果はSoftMax Pro Software を用いて計算し、解釈しました。
ウイルスに感染またはウイルスに対するワクチンを接種した多数の人のサンプルを検討し、ウイルスに対する免疫応答のタイミングと持続期間に関する理解を深めるためには、大量の血清サンプル中のSARS-CoV-2抗体を迅速に検査する必要があります。Lumit Dx SARS-CoV-2イムノアッセイは、簡単なワークフローで迅速に結果が得られます。SpectraMax iD5リーダーとSoftMax Proソフトウェアを組み合わせることで、結果の計算と解釈が自動化され、短い操作時間で高い処理能力が得られます。
References
- Post N, Eddy D, Huntley C et al. Antibody response to SARS-CoV-2 infection in humans: A systematic review. PLoS ONE 15(12): e0244126 (2020)
- Long QX, Liu BZ, Deng HJ et al. Antibody responses to SARS-CoV-2 in patients with COVID-19. Nat Med 26, 845–848 (2020).