Application Note SpectraMax Paradigmマルチモードマイクロプレートリーダー
を用いたHTRFヒトTNFαアッセイ

  • ロバスト性の高いホモジニアスアッセイ
  • Z' factor ≥ 0.9
  • HTSのための合理化と安定性
  • SoftMax Proソフトウェアプロトコルで結果までの時間を短縮
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はじめに

このアプリケーションノートでは、SpectraMax® Paradigm® マルチモードマイクロプレートリーダーを使用して、優れたZ'factorで堅牢な無洗浄サイトカインアッセイを実施する方法をご紹介します。

HTRF®は、Cisbio Bioassays社が開発した生体分子間相互作用を検出するための汎用性の高い技術です *1。 蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)技術と時間分解(TR)蛍光測定を組み合わせたもので、短寿命のバックグラウンド蛍光を除去することができます。このアッセイではドナー蛍光体とアクセプター蛍光体を用います。ドナーとアクセプターが十分に近接すると、エネルギー源(フラッシュランプなど)によるドナーの励起がアクセプターへのエネルギー移動を引き起こし、アクセプターは所定の波長で特異性蛍光を発します。

HTRFは、ドナー-アクセプターTR-FRETペアを形成するために組み合わせることができる4つの特異性蛍光体を使用します。ドナーは、ユーロピウムクリプテート(Eu3+)とテルビウム(Lumi4™-Tb)クリプテートであり、その長寿命蛍光は時間分解蛍光アッセイでの使用を可能にします *1。HTRFアッセイでは、XL665とd2の2種類のアクセプターが開発されています。どちらも、HTRF ドナーの Emission スペクトルと重なる励起スペクトルを持ちます。それぞれ665 nmに発光ピークがあり、この発光ピークはドナーが発光しない、あるいは非常に弱く発光する領域に含まれます。オリジナルのHTRFアクセプターであるXL665は、紅藻類から精製されたフィコビリタンパク質色素です。第二世代のアクセプターであるd2は、XL665より100倍小さい修飾アロフィコシアニンであり、XL665ベースのアッセイで起こりうる立体障害の問題を軽減するために開発されました。

腫瘍壊死因子α(TNFα)のようなサイトカインは、腫瘍学、感染症、アレルギー、自己免疫疾患の分野で特に注目されています。サイトカイン制御の乱れは、不適切あるいは非有効な免疫反応を引き起こすことが知られています。

ヒトTNFα測定キットはTNFαを直接定量することができます。Eu-Cryptateで標識された抗TNFα抗体とXL665またはd2で標識された抗TNFα抗体の2つの特異性抗体を含むサンドイッチイムノアッセイを用います。TNFαの存在下では、両抗体はTNFαと結合し、TRFRETが起こるように両標識が近接します(図1)。シグナルはサンプル中の抗原濃度に比例します。

材料

  • ヒトTNFαキット、1000テスト(Cisbio)
  • 白黒小容量384ウェルマイクロプレート(Greiner)
  • SpectraMax Paradigmマルチモードマイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス)
  • HTRF検出カートリッジ(モレキュラーデバイス P/N 0200-7011)

方法

キットの添付文書に記載されているように、20~2000 pg/mL のヒト TNFα 標準物質を調製しました。遊離ヒトTNFαからなる陽性アッセイコントロール、およびヒトTNFαを含まない陰性コントロール(TR-FRETなし)は、アッセイ活性を確認し、結果の正確な算出を助けるために含まれています。

試薬は、表1に示すように、1ウェルあたり最終容量20μLで分注しました。

Standard curve Negative control Assay control
10 µL standard 10 µL diluent 10 µL TNFα control
5 µL XL665 conjugate
5 µL Cryptate conjugate

表1. 384ウェル低容量プレートのアッセイセットアップ。

プレートに蓋をし、室温で3時間インキュベートした後、HTRF検出カートリッジ付きSpectraMax Paradigmプレートリーダーで時間分解蛍光を測定しました(機器設定は表2を参照)。

Optical Configuration HTRF Detection Cartridge
Read Mode TR-FRET
Read Type Endpoint
Wavelengths

Ex 340 nm Em 616 nm

Em 665 nm

PMT and Optics Number of Pulses: 30
Excitation Time: 0.05 ms
Measurement Delay: 0.03 ms
Integration Time: 0.2 msData Analysis

表 2. HTRF検出カートリッジ付きSpectraMax Paradigmプレートリーダーの最適化された機器設定。

HTRFアッセイの分析には、検出された2つのEmission波長に基づくシスビオの特許取得済みレシオメトリックエミッション法が使用されます。616 nm のドナーエミッションは内部参照として使用され、665 nm のアクセプターエミッションはアッセイされる生物学的反応の指標として使用されます。このレシオメトリック測定はウェル間のばらつきを低減し、化合物の干渉を排除します。以下のステップ 4 で算出される Delta F は、アッセイの SB 比を反映し、アッセイ間の比較に有用です。

結果は665nm/616nmの比から計算され、以下のようにデルタFで表されます:

Z'factorの値は、陰性コントロールと2000 pg/mL standard2 から算出しました。

データの作成と解析には、検出と解析を簡略化するためにあらかじめ設定された HTRF プロトコルがいくつか含まれている SoftMax Pro ソフトウェアを使用しました。

SpectraMax Paradigm プレートリーダーで測定したHTRFヒトTNFαキャリブレーション曲線。青丸:黒プレート、赤丸:白プレート。各プロットのr2値は1.00。

結果

SpectraMax Paradigmプレートリーダーにはリードハイトとマイクロプレートの最適化機能があり、ユーザーは最適なリードハイトとマイクロプレートのサイズを簡単に決定し、アッセイのダイナミックレンジと感度を向上させることができます。両方の最適化を各グレイナープレートに対して行いました。データはDelta F %(DF %)として表され、ヒトTNFα濃度に対してplotされました(図2)。最良の結果は、30パルス、遅延0.03ms、積分時間0.2msで得られました(表2)。

低容量の白色および黒色384ウェルマイクロプレートでも同様の結果が得られました。DF%値は黒色プレートで21~927、白色プレートで7~810の範囲でした。アッセイウインドウは黒色プレートの方が大きかったですが、白色プレートのZ'factorは0.95であったのに対し、黒色プレートは0.86で、全体的なアッセイ性能はわずかに優れていました *2。

結論

HTRF検出カートリッジ付きSpectraMax Paradigmプレートリーダーは、優れたリードタイムとZ'factorでハイスループットスクリーニング機能をご提供します。同時デュアルエミッション検出により、384ウェルプレート全体のリードタイムはわずか2:17です。感度とダイナミックレンジは、SpectraMax Paradigmプレートリーダーで得られた高いZ'factorによって実証されています。このアッセイは、SpectraMax® i3 および SpectraMax® M5e マルチモードマイクロプレートリーダーでも検出できます。あらかじめ設定されたHTRFプロトコルを備えた SoftMax Pro ソフトウェアを使用することで、データ収集と解析が簡素化されます。

参考文献

  1. https://www.htrf.com/htrf-technology
  2. Zhang, J. H., Chung, T. D. Y., and Oldenburg, K. R. (1999). A simple statistical parameter for use in evaluation and validation of high throughput screening assays. J. Biomolecular Screening 4(2): 67-73.

以下のモレキュラーデバイス システムと互換性があります。

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