Application Note SpectraMax iD5とi3xプレートリーダーで
Transcreener TR-FRETアッセイ用に設定を最適化

  • ハイスループットスクリーニング向けの単一添加・混合・読み取り型アッセイ形式
  • 赤色トレーサーと時間分解測定で、蛍光化合物による干渉を最小限に抑制
  • 10 μM ATP の10%変換で、Z’ factorが0.7を超えます
資料ダウンロード

PDF版(英語)

はじめに

Joyce Itatani|アプリケーションサイエンティスト|モレキュラーデバイス
Cathy Olsen|Sr.アプリケーションサイエンティスト|モレキュラーデバイス

Transcreener® HTSは、ヌクレオチドの検出に基づいたユニバーサルなハイスループット生化学アッセイプラットフォームです。このヌクレオチドは、細胞内の数千種類の酵素によって生成されるもので、その多くは細胞シグナル伝達の中心となる共有結合的な調節反応を触媒しており、創薬において非常に重要なターゲットとなっています。

Transcreener®TR-FRETアッセイは、遠赤色時間分解Förster共鳴エネルギー移動(TR-FRET)の出力でヌクレオチドを直接検出するシングルステップの競合的イムノアッセイです。すべてのアッセイの試薬は、特異性の高いモノクローナル抗体-テルビウム結合体に結合した遠赤色トレーサーです。テルビウム複合体をUV領域(約330 nm)で励起すると、トレーサーにエネルギーが移動し、より高い波長(665 nm)で発光します。標的酵素によって産生されたヌクレオチド二リン酸または一リン酸は、抗体からトレーサーを置換し、TR-FRETの低下をもたらします(図1)。赤色トレーサーを使用することで、蛍光化合物や光散乱による干渉を最小限に抑えることができます。Transcreener TR-FRETアッセイは、特にハイループットスクリーニング(HTS)用に設計されており、1回添加、混合&測定形式です。

図1. Transcreener TR-FRETアッセイの原理。この競合アッセイは、ドナー標識抗体と蛍光標識トレーサーを用います。分析物が存在しない場合、FRETが起こります。分析物が存在すると、トレーサーは抗体と競合し、FRETは阻害されます。

バリデーション基準

Transcreener HTS アッセイの利点を実現する上で重要な要素は、データ出力に使用するマイクロプレートリーダーの正しいセットアップです。フィルタリングやその他のコンポーネントを含む装置の設定を適切に選択することで、任意のアッセイに対する装置の感度に影響を与えることができます。この種のstandard curveは酵素反応を模倣しているため、10 μM の ATP/ADP 標準曲線(24 レプリケート)を実行することで、Transcreener アッセイ の機器性能に関する主要なパラメータが特定されました。10 μM の ATP から開始し、ADP を増量して加え、ATP をそれに比例して減少させ、総アデニンヌクレオチド濃度を 10 μM に維持しました。Z'>0.5の条件を決定するために、フラッシュ数を変化させました。ATPの10%変換でZ'>0.7が達成された場合、Transcreener TR-FRETアッセイを使用するためのバリデーションが行われます。

材料 

  • Transcreener ADP2 TR-FRET Red アッセイ
  • ATP/ADP ミクスチャー: 10 mM MgCl2、20 mM HEPES、0.01% Brij-35、およびATP/ADP(一定のアデニン濃度10 μMになるように配合)
  • ADP検出混合液: 1X Stop and Detect Buffer C、8 nM ADP2 Antibody-Tb Conjugate、26.8 nM ADP HiLyte 647 Tracer
  • High FRET ミクスチャー: 8 nM ADP2 Antibody-Tb Conjugate, 26.8 nM ADP HiLyte 647 Tracer, 1X Stop and Detect Buffer C, 10 μM ATP
  • 低FRET混合物:8 nM ADP2 抗体-Tb コンジュゲート、26.8 nM ADP HiLyte 647 トレーサー、1X 停止および検出バッファーC、10 μM ADP

Standard curveの設定

  1. ATP/ADPの組み合わせを10μLずつ、384ウェルプレートの列全体に分注します。
  2. ADP Detection Mixtureをそれらの列に10μL加えます。
  3. 10μM ATP/0 uM ADPの組み合わせをP列に10μL分注します。
  4. High FRET MixtureをウェルP1-P12に10μL分注します。
  5. ウェルP13-P24にLow FRET Mixtureを10μL分注します。

Standard curveの作成に関するより詳細な手順については、該当するTranscreener Technical Manual (https://www.bellbrooklabs.com/technical-resources/technical-manuals/)をご参照ください。

マイクロプレートリーダー 

  • SpectraMax® iD5 マルチモードマイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス #ID5-STD)に以下を搭載:
    ◦iD5 TRF Enhancement Module for enhanced TRF reads(モレキュラーデバイス #0200-7030)
    ◦Filter 320/100(モレキュラーデバイス)
    ◦Time Resolved Filter with holder 616nm BW 10nm(モレキュラーデバイス #6590-0118)
    ◦Time Resolved Filter with holder 665nm BW 10nm(モレキュラーデバイス #6590-0121)
  • SpectraMax i3x® マルチモードマイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス #I3X)に以下を搭載:
    ◦TR-FRET測定カートリッジ(モレキュラーデバイス)

機器設定

SpectraMax iD5およびSpectraMax i3xプレートリーダーは、SoftMax® Proソフトウェアを使用します。最適化された設定を使用して、以下の手順に進みます。

  1. SoftMax Proソフトウェアを開き、Read ModeにTR-FRET、Read TypeにEndpointを選択します。SpectraMax i3xプレートリーダーでは、Optical ConfigurationとしてHTRF(カートリッジ)を選択します。
  2. SpectraMax iD5プレートリーダーでは、320/100 excitation filter、616/10および665/10 excitation filterを装着し、ExcitationおよびEmissionのwavelengthメニューからこれらのフィルターを選択します。SpectraMax i3x プレートリーダーでは、HTRF カートリッジを装着し、Optical Configuration として HTRF を選択すると、wavelengthが自動的に選択されます。
  3. Plate TypeとRead Areaは、使用するマイクロプレートと読み取るウェルに基づいて選択する必要があります。standard curveでは、マイクロプレートのすべてのウェルを読み取ります。
  4. PMTとOptionの設定: Flashes per Read(またはPulses per Read)を20~100(ここに示す結果では50を使用)、measurement delayを0.05 ms、integration timeを0.7 msに設定します。
  5. マイクロプレートとread heightは、新しいロットのマイクロプレートやアッセイ容量を使用するたびに最適化する必要があります。

容量、マイクロプレートのロット、トレーサー、濃度が同じであれば、同じインストゥルメンテーション設定を後続のプレートの読み取りに使用できます。表1に上記の設定をまとめてあります。

  SpectraMax iD5プレートリーダー SpectraMax i3xプレートリーダー
Optical configuration N/A HTRF (cartridge)
Read mode TR-FRET TR-FRET
Read type Endpoint Endpoint
Wavelengths

Select ‘Use Filter’ for both Ex, Em.

 

Excitation: 320 nm

 

Emission 1: 615 nm

 

Emission 2: 665 nm

Excitation: 320 nm

 

Emission 1: 615 nm

 

Emission 2: 665 nm

Plate type

384 Well Corning low vol/rnd btm

384 Well Corning low vol/rnd btm

PMT and optics

Flashes per read: 50

Excitation time: 0.05 ms

Measurement delay: 0.05 ms

Integration time: 0.7 ms

Read height: 5.53 mm from the plate

On-the-fly detection: Off – Stop and Go

Number of pulses: 50

Excitation time: 0.05 ms

Excitation time: 0.05 ms

Integration time: 0.7 ms

Read height: 6.46 mm from the plate

More settings

Show Pre-Read Optimization options

 

表1. SpectraMax iD5 および i3x プレートリーダーの推奨設定。マイクロプレートとread height は、使用するマイクロプレートの新しいロットまたはアッセイ量ごとに最適化する必要があります(SoftMax Proソフトウェアの装置設定でShow Pre-Read Optimizationオプションを使用します)。

結論

SpectraMax iD5 および SpectraMax i3x プレートリーダーを Transcreener ADP2 TR-FRET Red アッセイに使用した場合の検証を行いました。最適化された装置設定を用いることで、Z'値>0.8が達成可能です(表2)。両装置とも、ATP変換率2%以上でバリデーション基準の0.7を超えるZ'値に達し(図2)、ATP変換率10%でZ'が0.7を超えるというバリデーションの最低要件を上回りました。

  Z’ at 10% ATP conversion
Flashes (pulses) per read SpectraMax iD5プレートリーダー SpectraMax i3xプレートリーダー

10

0.84 -
20 0.87 -
50 0.87 0.84
100 0.86 0.83

表2. 異なるプレートリーダー設定でのアッセイ性能

図2. A) 10 μM ATPからADPへの変換を複製したstandard curveで観察されたZ'値です。B) 標準曲線の0~2μM ADPセクションの拡大図は、Z'バリデーション最小適格性データ(赤点線)と10% ATP変換バリデーションポイント(黒点線)を示します。青のプロットはSpectraMax iD5プレートリーダーによるデータ、緑のプロットはSpectraMax i3xプレートリーダーによるデータで、いずれも積分時間は50msです。

マルチモードマイクロプレートリーダーについて詳しくはこちら>>

資料ダウンロード

PDF版(英語)