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2020/11/16

セミナー関連情報

MIMETAS・Molecular Devices共催オンラインセミナー

Microphysiological system (MPS)を用いた新たな薬物動態/毒性スクリーニング系にかける期待と展望

開催概要

演者:前田和哉先生(東京大学大学院薬学系研究科 分子薬物動態学教室)

日時:2020年12月2日(水) 

時間:15時~16時15分(登録は当日正午までにお願いします) 

参加費:無料

場所:オンライン(登録者に開催URLをお送りします) 

登録方法:こちらからご登録お願いします。 (接続速度の関係で先着順とさせて頂く場合があります。あらかじめご了承ください。)

プログラムスケジュール

15:00-15:45 講演
「Microphysiological system (MPS)を用いた
新たな薬物動態/毒性スクリーニング系にかける期待と展望」
15:45-16:00 質疑応答
16:00-16:15 技術紹介

演題 Microphysiological system (MPS)を用いた新たな薬物動態/毒性スクリーニング系にかける期待と展望

演者:前田和哉先生 (東京大学大学院薬学系研究科 分子薬物動態学教室)

薬物の体内動態は、複数の代謝酵素・トランスポーターの発現・機能に加えて、臓器容積・血流速度等生理学的な要因を含む複雑な生体システムのアウトプットとして規定されることから、薬物動態の精緻な予測のためには、各パラメータが正確に見積もることができる実験系が必要とされる。現在、各分子種ごとの機能は遺伝子発現系の構築により速度論パラメータが正確に求められるようになってきたが、一方で、複数の分子がin vivoのintactな臓器での発現を維持している臓器細胞レベルでの評価系は、必ずしも完備されたとは言い難い状況にある。その一つに、ヒト臓器由来細胞の入手が極めて困難であることが挙げられる。我々はこれまで、ヒト凍結肝細胞が市場に出回り始めたころから、ヒト凍結肝細胞を用いた肝クリアランスの機構論的な定量的理解に資する実験系を発表し、医薬品のヒト肝クリアランスの予測に貢献してきた。また、適切なパラメータを個体レベルの薬物動態を再現する数理モデル(生理学的薬物速度論モデル)に実装することにより、分子レベルの機能の再構築、シミュレーションによる臨床試験を介さないあらゆるsituationでの薬物動態予測を実施してきた。

一方、肝臓以外の臓器では、現時点ではヒト臓器由来細胞が創薬アッセイ系として利用できていない。例えば、消化管吸収予測のためのヒト小腸上皮細胞の入手は極めて困難であり、培養も難しいことから、大腸がん由来不死化細胞株Caco-2細胞が未だに代替系として利用されているが、代謝酵素・トランスポーターの発現プロファイルもintactな消化管とは異なることから、必ずしも良いスクリーニング系とは言えない。我々は、近年筑波大学消化器外科(小田竜也教授)との共同研究において、極めて高頻度にかつ極めて阻血時間の短い新鮮度の高い膵頭十二指腸切除術の残余検体のヒト新鮮消化管を供与していただき、ヒト消化管吸収の良好な予測を実現化した(Michiba et al., Drug Metab Dispos, accepted (2020))。現在、より簡便な細胞レベルでの実験系として、cryptの安定培養系・分化条件の構築を実施しており、ある程度promisingなデータも得ている。

但し、分化細胞の機能を高次にかつ長期間維持するためには、様々な観点からの培養条件の最適化は必須であり、その一つの選択肢としてMPSの導入が考えうる。我々も最近AMED-MPS事業への参画を機に、MIMETASのOrganoPlate® 3-laneによる管状消化管構築に興味を持ち、医薬品のヒト消化管透過性の予測系としての利用価値を検討し始めている。まだpreliminaryな段階ではあるが、Caco-2細胞を播種したところ、初回の実験でありながら、かなりの高確率のwellにおいて、OrganoTEER®で同時測定されたTEERが十分高く、また細胞間隙透過マーカーのTRITC-dextran(4.4kDa)の透過が制限されていた。また、Molecular Devices社の協力をいただき、ImageXpress® Micro Confocalシステムによる染色画像を取得したところ、明瞭な管状構造を確認することが出来た。従って、MIMETASの系は簡便にintegrityの高い細胞チューブを構成できることが分かった。また、消化管における薬物の管腔側への排出に関わるトランスポーターP-glycoprotein (P-gp)による輸送機能について、Rhodamine123の管腔内から管腔外への輸送を観察したところ、P-gp阻害薬共存下においてRhodamine 123の輸送が増強されたことから、P-gpの吸収抑制作用がMIMETASの系で確認された。現在、我々のcrypt培養由来細胞のMIMETASの系への搭載に向けて条件検討に入ったところで、その結果に期待している。我々のcrypt培養系の特徴として、分化細胞の遺伝子発現がcryptを採取した由来部位の発現を反映すること、動物種を超えて培養条件がほぼ統一したものを用いることが出来ることがあり、一たび系が出来てしまえば、部位差・種差の検討にも拡張できると期待している。

以上、MPSの適用による、より高機能な薬物動態評価系構築への期待と展望を述べたいと考えている。

前田和哉先生 ご略歴

1999.3 東京大学薬学部 卒業 1999.4 – 2001.3 東京大学大学院薬学系研究科 修士課程 2001.4 – 2002.3 同 博士後期課程(中途退学 2002.4 – 2003.3 東京大学大学院薬学系研究科 寄附講座教員 2003.4 – 2007.3 同 助手(2006.11 薬学博士 取得) 2007.4 – 2012.9 同 助教 2012.5 – 2021.3(予定) 理化学研究所イノベーション推進センター 杉山特別研究室 客員主管研究員(兼任) 2012.10 – 2020.5 東京大学大学院薬学系研究科 講師 2020.6 – 現在 同 准教授

主な受賞歴

2009年 日本薬物動態学会 奨励賞 2010年 第3回 臨床薬理研究振興財団 研究大賞 2011年 日本薬剤学会 奨励賞 2013年 日本薬学会 奨励賞 2014年 Asia Pacific ISSX New Investigator Award(国際薬物動態学会(ISSX)) 2019年 2019 Highly Cited Review Award for Biological and Pharmaceutical Bulletin (BPB)(日本薬学会) 2020年 DMPK Editors’ Award for the Most Excellent Article in 2019 (筆頭著者:2nd place, 3rd place、共著者:1st place, 3rd place)(日本薬物動態学会)

技術紹介

OrganoPlate® (MIMETAS)

ウェブページ 製品説明資料

ImageXpress® Micro Confocal ハイコンテントイメージングシステム
(Molecular Devices)

ウェブページ

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